製造業のマーケティング|引き合いが増える順番とAI検索への備え

「紹介と既存の取引先で回してきたけれど、ここ数年で新規の引き合いが細ってきた」。
製造業の経営者や、営業を兼務しているWeb担当の方から、この相談をいただくことが増えました。
設備もあるし、技術もある。
それでも新しい会社からの声がかからない、という状態です。

この状態で多くの会社が最初に手を出すのが、広告を出すこと、サイトをきれいに作り直すこと、そして展示会を増やすことです。
どれも間違いではないのですが、順番が違うと費用だけ出ていきます。
発注する側は、工場を「見た目」で選んでいないからです。
加工方法、材質、サイズ、公差、ロット、納期、対応エリア。
この条件が自社の案件と合うかどうかを先に確かめて、合わない会社を候補から外していきます。
製造業の集客は、この条件が伝わるかどうかでほとんど決まります。

この記事では、製造業のマーケティングを「引き合いが増える順番」で整理します。
大手向けのMAやABMの話ではなく、社長と数人で回している町工場や中小の加工屋さんが、今日から着手できる順番です。
あわせて、AI検索から見つけてもらうための備えも書きます。
私自身、自分のサイトで同じ順番を試し、Google Search ConsoleとSE Rankingで効き方を確かめながら書いています。

この記事の結論

製造業のマーケティングは、集客を増やす前に「探された時に選ばれる状態」を作るほうが先です。
順番は、①作れるものではなく解決できる困りごとで言葉を作り直す、②対応できる加工・材質・サイズ・公差・ロット・納期・対応エリアを一覧で出す、③加工事例を1件1ページで積む、④図面を送れる問い合わせフォームにする、⑤検索とAI検索の両方から見つかる状態を作る、⑥展示会や紹介とWebをつなぐ、の6つです。
①〜④は自社の情報を整理するだけなので、外注費をかけずに着手できます。
ChatGPTやAI Overviewは「SUS304を小ロットで削ってくれる工場」のような条件つきの質問に答えるので、条件が書かれていないサイトは候補にすら上がりません。
効き始めるまでの目安は早くて3か月、多くは6か月から1年で、既存サイトの状態や競合の数によって個人差があります。
町工場の集客でも順番は同じで、まずは対応条件の一覧と加工事例2本から始めるのが、いちばん転びにくい入り口です。

もくじ
  1. 紹介頼みの引き合いが細るのは景気だけが理由ではない
  2. 製造業のWebマーケティングは着手順で結果が変わる
  3. ステップ1|困りごとの言葉に翻訳する
  4. ステップ2|対応条件を一覧で出す
  5. ステップ3・4|事例を積み図面を受け取る
  6. ステップ5|検索とAI検索の両方に載る
  7. ステップ6|展示会と紹介をWebにつなげる
  8. まとめ:探す側に条件を届ける
  9. よくある質問

紹介頼みの引き合いが細るのは景気だけが理由ではない

まず、なぜ新規の引き合いが減るのかを整理します。
景気や取引先の海外移転といった外部要因はもちろんあります。
ただ、相談を受けて調べてみると、それ以前のところで止まっている会社がかなり多いです。
「そもそも探されている場面に、自社が出てきていない」という止まり方です。

製造業の集客が止まるのは探される前の段階

発注側の担当者が新しい外注先を探すとき、いきなり電話をかけるケースは多くありません。
まず検索して、出てきた数社のサイトを開いて、条件が合うかどうかを見ます。
この時に見ているのは、会社の理念でも社長の挨拶でもありません。
「うちの図面、この工場で削れるのか」だけです。
そこが書かれていないサイトは、その場でタブを閉じられます。

さらに担当者は、上司に「複数社から見積もりを取りました」と報告する必要があるので、その候補を自分で選ばないといけません。
選ぶ基準は、条件が合うことと、似た案件の実績があることです。
条件も実績も書いていない会社は、社内稟議を通す材料がないという理由で外れます。
だから条件表と加工事例が効きます。

MA・ABM論は中小の現場では動かない

「製造業 マーケティング」で検索すると、MA(マーケティングオートメーション)やABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の記事がよく出てきます。
リードを何千件も抱えて、スコアリングして、インサイドセールスが電話をかける、という話です。
これは営業部門が10人以上いる規模の会社の話で、社長が営業も見積もりも段取りもやっている会社に持ち込んでも回りません。

中小の製造業でやるべきなのは、リードを大量に集めて絞り込むやり方ではなく、少なくても条件の合う相手だけが問い合わせてくる状態を作ることです。
月に3件でも、条件が合っていて図面が添付されている問い合わせなら、営業を兼務している社長でもさばけます。

筆者

竹田康平

BtoBの支援の現場で見てきた範囲では、サイトを直す前に「どんな問い合わせが来たら嬉しいですか」と聞くようにしています。
ここで即答できる会社は、書くべき条件がすでに頭の中にあります。
即答できないときは、まずそこをほぐすところから始めます。

製造業のWebマーケティングは着手順で結果が変わる

ここからが本題です。
製造業のWebマーケティングは、着手する順番でかかる時間と費用が大きく変わります。
広告や記事投稿から始めると、受け皿ができていないところに人を流し込むことになって、費用対効果が読めません。
先に受け皿を作って、そのあとで流入を増やすほうが、結果的に早いです。

製造業で引き合いが増えるまでの6ステップと着手にかかる目安期間 製造業のWebマーケティングに着手する順番を6段階で示した図。数字は各ステップの作業にかかる期間の目安で、引き合いが増え始めるまでの期間とは別のもの。1番目は「困りごとの言葉に翻訳する」で、作れるものの羅列ではなく発注側が検索する言葉にサイトの表現を合わせる作業。作業の目安は1か月から2か月。2番目は「対応条件を一覧で出す」で、加工方法・材質・サイズ・公差・ロット・納期・対応エリアを表にする作業。作業の目安は2週間から4週間。3番目は「加工事例を1件1ページで積む」で、写真と条件と課題と解決をセットで書く作業。作業は月2本ずつ継続する。4番目は「図面を送れるフォームにする」で、ファイル添付と概算見積もり依頼を受けられる問い合わせ導線を用意する作業。作業の目安は1週間から2週間。5番目は「検索とAI検索の両方に載る」で、構造化データと会社情報を明記する作業。作業の目安は1週間から2週間で、検索やAIの回答に反映されるまでにはさらに時間がかかる。6番目は「展示会・紹介とWebをつなぐ」で、名刺交換のあとに見られるページを用意する作業。展示会ごとに実施する。上から順に着手し、1から4は自社の情報整理だけで進められる。 引き合いが増えるまでの6ステップと作業目安 1 困りごとの言葉に翻訳する 発注側が検索する言葉に合わせる 作業目安 1〜2か月 2 対応条件を一覧で出す 加工・材質・寸法・公差・ロット・納期・エリア 作業目安 2〜4週間 3 加工事例を1件1ページで積む 写真・条件・課題・解決の4点セット 作業 月2本ずつ継続 4 図面を送れるフォームにする 添付と概算依頼の受け口を用意する 作業目安 1〜2週間 5 検索とAI検索の両方に載る 構造化データと会社情報を明記する 作業目安 1〜2週間 6 展示会・紹介とWebをつなぐ 名刺交換の後に見るページを作る 展示会ごと
図1: 引き合いが増えるまでの6ステップ。期間は各ステップの作業にかかる期間の目安です。引き合いが増え始めるまでの期間はこれとは別で、本文の注意書きを参照してください。

ステップ1から4は外注費をかけずに着手できる

図1の6ステップのうち、1から4は自社が持っている情報を整理して書き出す作業です。
新しい設備も、新しい人材も要りません。
見積もりのときに口頭で答えている内容を、そのまま文字にするだけです。
「その材質はうちだと厳しいですね」「その公差なら出せます」「ロット10個からで大丈夫です」。
電話で毎日話している内容が、そのままサイトに書くべき内容です。

ここが製造業のいちばん強いところだと思っています。
飲食店やサービス業がコンテンツを作ろうとすると、書ける固有の情報が少なくて苦労します。
製造業は、設備一覧・加工条件・材質・実績という一次情報の塊を最初から持っています。
持っているのに、サイトに出していないだけ、という状態がとても多いです。

順番を飛ばすと何が起きるかを先に知っておく

順番を飛ばした時に何が起きるかを、先に見ておきます。
下の表は、BtoBの支援で見てきた典型的なつまずき方を整理したものです。

やりがちな進め方起きること順番どおりに進めた場合
先に広告を出すクリックは来るが条件が合わず離脱。費用だけ消える条件表と事例を先に置き、合う人だけが問い合わせる
先にサイトをデザイン刷新見た目は良くなるが判断材料が増えず問い合わせは変わらない書く中身を決めてから作るので、刷新の効果が出る
先にブログを毎日更新業界ニュースや日記が増え、引き合いにつながらない加工事例という更新ネタが自動的に溜まる
先に展示会を増やす名刺は集まるが、後から見てもらうページがなく追いかけられない名刺交換後に見るページがあり、後追いが効く
先にMA・SFAを導入入れるリードがなく、ツール費だけ発生する問い合わせが安定してから検討でき、判断を誤らない
BtoBの支援で見てきた典型的なつまずき方と、順番どおりに進めた場合の違い(筆者整理)

どの順番で手を付けるか迷ったときは、30分無料相談で現状のサイトを見ながら整理することもできます。
着手の順番さえ決まれば、あとは社内で回せる会社が多いです。

この順番でも、すぐには効きません

先に正直に書いておくと、この6ステップは即効性のある方法ではありません。
条件表とフォームの改善は数週間で終わりますが、そこに人が来るようになるまでには時間がかかります。
検索から安定して引き合いが入るまでの目安は、早くて3か月、多くは6か月から1年です。
今月中に売上が要る、という状況なら、Web広告や既存取引先への声かけのほうが向いています。
この記事の順番は、来年も再来年も引き合いが続く状態を作るための投資として読んでください。

ステップ1|困りごとの言葉に翻訳する

最初のステップは、サイトに載せる言葉の作り直しです。
ここを飛ばすと、あとの作業が全部ずれます。
逆にここが決まると、条件表も事例ページも書く内容が自動的に決まります。

加工名の羅列は探す側の言葉と一致しない

多くの工場のサイトには「切削加工」「板金加工」「精密部品加工」と書いてあります。
これは自分たちが持っている技術の名前で、間違ってはいません。
ただ、発注側が困っている時に打ち込む言葉とは、少しずれています。
担当者が抱えているのは「試作を1個だけ、2週間で作ってくれるところがない」「材質を変えたら今の工場で断られた」といった具体的な事情です。

だから検索されるのは「切削加工」だけではなく、「試作 1個 短納期 切削」「チタン 削り出し 小ロット」「◯◯(材質) 溶接 対応 工場」のような、条件が混ざった言葉になります。
この言葉に自社のページが対応していないと、そもそも表示されません。
技術の名前を並べるだけのページは、探す側から見ると「たぶんできるんだろうけど、うちの案件で頼めるかはわからない会社」に見えています。

困りごと起点に言い換えるとページの中身が決まる

言い換えの考え方はシンプルで、「何ができるか」の後ろに「だから、どんな困りごとが解決するか」を足すだけです。
下の表で、よくある書き方と、困りごと起点に直した書き方を並べます。

よくある書き方(技術起点)困りごと起点への言い換え拾える検索の例
精密切削加工試作1個から対応。図面をいただいた翌営業日に可否と概算をお返しします試作 1個 切削 短納期
難削材の加工実績多数チタン・インコネルなど、他社で断られた材質のご相談を受けていますチタン 加工 断られた 工場
小ロット生産に対応10個から300個の小〜中ロット。量産設備では割に合わない数量を引き受けます小ロット 部品 加工 100個
豊富な設備を保有最大800mmまで一体で削れます。分割せずに済むので組立工数が減ります大物 加工 一体 削り出し
短納期対応標準7営業日、最短3営業日。ライン停止時の代替部品のご相談も受けています設備 部品 至急 製作
技術起点の表現を困りごと起点に言い換えた例。材質名・数値は例示です。自社の実際の対応範囲に置き換えてください(筆者整理)

右側の書き方に共通しているのは、読んだ人が「これはうちの話だ」とその場で判断できることです。
条件が合わない人はきちんと離脱してくれるので、合わない見積もり依頼で現場の時間が削られることも減ります。

なお、どの言葉を拾いに行くかというキーワード設計の詳しい手順は、BtoB SEOの進め方|商談につながるKW設計のほうにまとめています。
この記事は業種特化の「順番」の話なので、キーワードの選び方まで踏み込みたい方はそちらもあわせて読んでみてください。

言葉を決める時に社内で確認する3つの質問

言い換えを考えるとき、外部の人間に聞くよりも、社内で答えを持っていることが多いです。
次の3つを、営業と現場の両方に聞いてみてください。

  • 直近1年で受注した案件のうち、いちばん利益率が良かったのはどんな条件の案件か
  • 問い合わせの電話で、いちばんよく聞かれる質問は何か
  • 他社で断られてうちに来た、という話をされた案件はどんな内容だったか

3つ目が特に効きます。
他社が断る案件を受けられるということは、そこが自社の差別化ポイントだからです。
断られた側の担当者は、次も同じ言葉で検索します。
その言葉をページに書いておけば、次はその人が最初に見つけるのが自社になります。

「何でもやります」は何も言っていないのと同じ

業種を問わず相談で多いのが「うちは何でもやるので、絞れません」という反応です。
気持ちはわかるのですが、探す側からすると、何でもやる会社は判断できない会社です。
絞るのは受注範囲ではなく、サイトに書く入り口だけで構いません。
入り口を「難削材」や「試作1個」に絞っておいて、来た人に「他の加工もやっています」と伝えれば、受注範囲は狭まりません。

ステップ2|対応条件を一覧で出す

言葉が決まったら、次は条件の一覧です。
6ステップの中でいちばん手間が軽くて、いちばん効きやすいところだと思っています。
社内で共有されている対応範囲を表にするだけなので、2週間から4週間もあれば形になります。

発注側が最初に見る7つの条件

発注側が工場を探す時に確認する条件は、業種が違ってもだいたい共通しています。
図2にまとめました。
自社のサイトに、この7つがいくつ書かれているかを数えてみてください。

発注側が工場を探すときに見る7つの条件と自社のサイトへの記載チェック 発注担当者が外注先を探すときに確認する条件を7つ挙げ、それぞれに書くべき内容の例を添えた図。1つ目は加工方法で、5軸MCやワイヤーカットなど設備名まで書く。2つ目は材質で、SUS316やチタン、樹脂など具体的な材料名を挙げる。3つ目はサイズと重量で、最大加工寸法と扱える重量を書く。4つ目は公差と精度で、プラスマイナス0.01mmなど対応できる精度を書く。5つ目はロットで、単品1個からか量産中心かを書く。6つ目は納期で、標準納期と短納期対応の可否を書く。7つ目はエリアと出荷で、所在地と対応できる地域を書く。図の最後には、7つのうち自社のサイトに書けている項目が3つ以下なら、まず条件表の作成から着手する、という判断の目安を示している。 発注側が工場を探すときに見る7条件 この7つが書かれていないページは、比較の土俵に乗りません 1. 加工方法 5軸MC、ワイヤーカットなど設備名まで 2. 材質 SUS316、チタン、樹脂など具体名で 3. サイズ・重量 最大加工寸法と扱える重量を数値で 4. 公差・精度 対応できる公差の範囲を明記する 5. ロット 単品1個からか、量産中心かを書く 6. 納期 標準納期と短納期対応の可否 7. エリア・出荷 所在地と、対応できる地域を書く 書けているのは何項目? 3つ以下なら、まず条件表から着手 条件が書かれていれば、AIも人間も候補として拾えます
図2: 発注側が工場を探すときに見る7条件と、自社のサイトへの記載チェック。項目は見積もり依頼時に確認される一般的な事項をもとに筆者が整理したものです。

この7つを表にして、トップページから1クリックで着ける場所に置きます。
設備一覧のページを持っている会社は多いのですが、機械の型番だけが並んでいることがよくあります。
型番は同業者には伝わりますが、発注側の設計や購買の担当者には伝わりません。
「この機械があるから、こういう加工が、この精度で、この大きさまでできます」まで書いて、はじめて判断材料になります。

「できないこと」を書くと問い合わせの質が上がる

条件表を作る時に、対応できる範囲だけでなく、対応が難しい範囲も書いておくことをおすすめしています。
「◯◯mmを超える大物は対応していません」「量産1万個以上は他社さんのほうが向いています」といった書き方です。
これを書くと問い合わせの数は減りますが、残った問い合わせの成約率は上がります。

製造業の現場では、見積もり作業そのものにコストがかかります。
図面を読んで、工程を組んで、材料費を当たって、やっと1件の見積もりが出ます。
そこに条件の合わない依頼が混ざると、それだけで半日が飛びます。
できないことを先に書くのは、正直さのためだけでなく、実務のためです。

条件は表形式で書き、画像にしない

条件表を作る時の技術的な注意点が1つあります。
表をExcelで作って、画像として貼り付けないでください。
画像の中の文字は、検索エンジンにもAIにも読み取りづらいままです。
せっかく整理した条件が、探す側にも、AIにも届かなくなります。
手間はかかりますが、HTMLの表として作るか、少なくとも表の内容を文章でも書いておいてください。

ここは、サイトの基本的な作りの話とも重なります。
条件を書いても問い合わせが増えない場合は、そもそもサイト側に別の問題があるかもしれません。
その場合はホームページで集客できない7つの原因のほうを先に確認してみてください。

ステップ3・4|事例を積み図面を受け取る

ここが製造業のマーケティングで、いちばん効果が大きいところです。
そして、いちばん続かないところでもあります。
加工事例は、他業種がどれだけ予算をかけても作れない一次情報です。
実際にその部品を削った会社しか書けない内容だからです。

事例ページに入れる4点セット

加工事例のページは、次の4点をセットで書きます。
この4つが揃っていれば、写真が1枚でも十分に機能します。

  • 写真:現物の写真。スマホで撮ったもので構いません。加工面がわかる角度で1枚から3枚
  • 条件:材質・寸法・公差・数量・納期・使った設備。表形式で並べる
  • 課題:どんな困りごとで相談が来たのか。前工程の失敗や、他社で断られた経緯があればそれも
  • 解決:どう工程を組んで解決したか。工夫した点、提案した代替案

ポイントは、1件ごとに独立した1ページにすることです。
「加工事例一覧」の中に写真だけを20枚並べても、検索では1ページ分の力しか持ちません。
1件1ページにすれば、それぞれが違う条件の検索を拾います。
「SUS316 薄肉 削り出し」で来る人と「アルミ 大物 一体加工」で来る人は別なので、ページを分けておくとそれぞれに直接着地してもらえます。

事例は「課題」の1段落がいちばん読まれる

4点セットの中で、読んだ人の反応がいちばん変わるのは「課題」の部分です。
条件と写真だけのページは、カタログとしては成立しますが、相談したい気持ちにはつながりません。
「他社で3回試作して寸法が出ず、納期が迫った状態でご相談をいただきました」の1段落があるだけで、同じ状況の人が自分の話として読みます。
ここは長く書く必要はなく、2文か3文で十分です。

守秘義務で出せない事例をどう書くか

ここで、ほぼすべての工場がぶつかる壁があります。
「加工事例が強いのはわかるけれど、守秘義務があって出せるものがほとんどない」という壁です。
部品の形状そのものが取引先の製品の機密ですから、これは正当な懸念です。

私が提案しているのは、出せる範囲まで削って書く、というやり方です。
全部出すか、まったく出さないか、の二択にしないということです。
具体的には、次のように削っていきます。

出せない情報削り方それでも残せる価値
取引先の社名「半導体製造装置メーカー様」など業界と立場だけ書く読者は自分と同じ業界かを判断できる
部品の形状・図面図面は載せず、材質・寸法帯・公差・工程だけを書く技術的な難易度は条件から伝わる
製品の用途「装置内の位置決め部品」程度まで抽象化するどんな精度が求められるかは伝わる
現物の写真その案件と無関係な端材・材料・設備・加工面のマクロ写真に差し替える加工面の質感や設備の様子は伝わる
数量・金額「10個以下の小ロット」など幅で書くロット感が合うかは判断できる
守秘義務がある案件を事例化するときの削り方(筆者整理)。公開前に取引先へ確認するのが前提です。

削っていくと、残るのは「業界・用途の抽象化・条件・工程・工夫」です。
探している人が知りたいのは、その部品が何に使われているかではなく、自分の案件をこの工場が受けられるかどうかなので、これだけでも十分に伝わります。
むしろ社名も形状もない事例のほうが、条件が前面に出て読みやすくなることもあります。

公開前に取引先へ一言確認する

社名を伏せて条件だけを書く場合でも、公開前に取引先へ確認を取ることをおすすめします。
業界と用途と条件が揃うと、同業者には特定できてしまう場合があるためです。
秘密保持契約の内容によっては、匿名でも公開が制限されていることもあります。
確認の手間を惜しんで信頼を失うと、Web集客どころではなくなります。
「社名は出さず、材質と公差だけ書かせてもらえませんか」と聞けば、了承をもらえることも少なくありません。
なお、専用治具や試作品は形状そのものが機密になり得るので、写真には使わないでください。

月2本でも1年で24本になる

事例づくりで大事なのは、一気に作らないことです。
「まず30本作りましょう」と言われると、誰も着手できません。
月に2本と決めるほうが続きます。
月2本なら1年で24本、2年で48本。
48本の加工事例が並んだサイトは、同じ地域の同業の中でかなり目立ちます。

運用の型としては、納品時に現場でスマホの写真を撮っておき、月末に2件分だけ文章を書く形が回りやすいです。
写真は後から撮れないので、そこだけルール化しておきます。
条件が正確であれば、文章の巧拙は問い合わせにほとんど影響しません。

筆者

竹田康平

私も自分のサイトで同じことをやっています。
支援した内容をそのまま出すわけにはいかないので、手順と考え方だけを残す形で記事にしています。
出せない部分を削っても、条件と考え方が残っていれば読まれるというのは、自分で試して確かめました。
製造業の事例づくりも、たぶん構造は同じです。

自社のサイトに条件は書けていますか

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ステップ4|図面が送れるフォームにする

条件表と事例を整えると、「相談してみようかな」と思う人が出てきます。
その気持ちを受け止められるかどうかが次のステップです。
作業量はいちばん軽く1週間から2週間で終わるのに、ここで取りこぼしている会社がとても多いです。
よくある取りこぼしは、次の3つです。

1つ目は、ファイルを添付できないことです。
発注側の担当者は、図面を見てもらうのがいちばん早いと知っています。
送れないフォームだと「じゃあメールで送るか」と一度考えて、そのまま別の会社を探しにいきます。
PDFとDXF、できればSTEPを受け付けられるようにしておくと話が早いです。

2つ目は、入力項目が多すぎることです。
部署名、役職、従業員数、予算、導入時期。
まだ相談するか決めていない段階でこの量を求められると離脱します。
要るのは会社名・担当者名・連絡先・相談内容・図面の添付の5つで、残りは返信のやりとりで聞けます。

3つ目は、送ったあとに何が起きるかが書かれていないことです。
納期に追われている担当者にとって、返事がいつ来るかは判断材料そのものです。
フォームの近くに「図面をいただいてから、翌営業日までに可否と概算をお返しします」と書いてあるだけで、送信率は変わります。

図面は、送る側にとっては機密そのものです。
だから「どう扱うか」を書いておくと、送るハードルが下がります。
秘密保持契約が必要なら先に締結できること、社内でどう管理するか、見積もり後にデータをどうするか。
この3点を短く書いておくだけで、初めての相手からでも図面が届くようになります。
あわせて電話番号も併記してください。
ライン停止の代替部品のような急ぎの案件では、フォームより電話が選ばれます。

ステップ5|検索とAI検索の両方に載る

受け皿ができたら、見つけてもらう側の話です。
ここ数年で変わったのは、探し方の入り口が検索エンジンだけではなくなったことです。
ChatGPTで工場を探すという話も聞くようになりましたし、GoogleでもAI Overviewが検索結果の上に出るようになりました。

用語解説:AIO(えーあいおー)

AIOとは、ChatGPTやGeminiのような生成AI、およびGoogleのAI Overviewのような「AIが答えを作る場面」で、自社の情報が引用・推薦されるように整えていく取り組みのこと。
LLMOやAEOと呼ばれることもあります。
やることはSEOと重なる部分が多く、まったく別の作業をするわけではありません。
詳しくはAIに推薦されるには?LLMO・AIO対策の教科書にまとめています。

AI検索は条件つきの質問に答えている

AI検索が製造業にとって重要なのは、質問の形が変わるからです。
従来の検索では「切削加工 京都」のような2語、3語の入力が中心でした。
AIに聞くときは、文章で聞けます。
「SUS316の薄肉部品を、公差プラスマイナス0.02mmで、10個だけ、3週間で作ってくれる関西の工場を教えて」といった質問が、そのまま投げられます。

この質問に答えようとするAIは、条件が書かれているページを探します。
材質が書かれていないページ、公差の範囲が書かれていないページ、ロットの下限が書かれていないページは、候補として挙げようがありません。
技術的には対応できる工場でも、書いていなければ存在しないのと同じ扱いになります。
AIも人間も、書かれていない情報は読み取れません。
これは意地悪ではなく、単純に情報がないだけです。

逆に言えば、条件表と加工事例をやった会社は、この時点でかなり有利です。
AI検索への備えを追加するというより、順番どおりに進めた結果として備えができている、という関係になります。

会社情報と構造化データを機械が読める形にする

その上で、AIと検索エンジンに読みやすくする作業を足します。
難しいことではなく、次の2つです。

1つ目は、会社情報をサイト内にきちんと書くことです。
正式な社名、所在地、電話番号、設立年、代表者名、事業内容、対応エリア。
会社概要ページにこれが揃っていると、AIがその会社を「実在する具体的な事業者」として扱いやすくなります。
推薦する側にも、間違った情報を出したくないという事情があります。

2つ目は、構造化データです。
Organization(組織)、LocalBusiness(地域の事業者)、FAQPage(よくある質問)あたりを入れておくと、機械側が情報を取り違えにくくなります。
WordPressならプラグインで対応できることも多いです。
書き方の詳細は構造化マークアップとは?書き方と4つの型にまとめています。
私も自分のサイトでFAQPage、Person、Organization、Service、Articleを実装し、どう読まれるかを確かめながら運用しています。

AIにどう見えているかは月に一度見ておく

やりっぱなしにしないための確認方法は簡単で、拾いたい条件の質問をそのままAIに投げるだけです。
「◯◯(材質)を小ロットで加工してくれる、◯◯(地域)の工場を教えて」と聞いて、自社が出てくるかを見ます。
出てこないなら、その条件がサイトのどこにも書かれていない可能性が高いです。

私は自分のサイトで、主要なキーワードをChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityの4エンジンで月次にトラッキングしています。
エンジンによって答えがかなり違うこと、同じエンジンでも月によって変わることがわかります。
まずは1エンジンでも構いません。
月に一度、5つくらいの質問を投げて結果をメモに残すだけで、書き足すべき条件が見えてきます。

どこから手を付けるべきか判断がつかない時は、30分無料相談で現状のサイトを一緒に見ながら整理することもできます。
条件表から始めるべきか、事例から始めるべきかは、既存サイトの状態によって変わります。

ステップ6|展示会と紹介をWebにつなげる

最後のステップは、既存のオフラインの活動とWebをつなぐことです。
製造業の引き合いは、展示会と紹介が今も強い経路です。
やめる必要はなく、Webと組み合わせると同じ展示会からの成果が変わります。

町工場の集客は展示会とWebをつなぐと伸びる

展示会で名刺を交換した相手は、社に戻ってから会社名で検索します。
その時に出てくるのが更新の止まったトップページだけだと、そこで話は終わります。
条件表と加工事例が並んでいれば、「この会社、うちの案件も見てもらえそうだ」と続きます。

もう一歩やるなら、展示会用のページを1枚作っておくのがおすすめです。
出展した内容、展示した部品の加工条件、ブースで多かった質問への回答。
名刺やパンフレットにそのページのQRコードを載せておけば、後から見返してもらえます。

既存取引先への横展開もWebが助ける

意外と見落とされがちなのが、既存の取引先が自社の対応範囲を知らない、という状況です。
10年取引していても、相手が知っているのはその部署が発注している加工だけ、ということがよくあります。
別の部署に困りごとがあっても「あの工場は◯◯屋さんだから」と思われていて、声がかかりません。

条件表と加工事例のページは、ここでも効きます。
訪問のときに「うちの対応範囲、このページにまとめました」と一言添えるだけで、社内で共有してもらえます。
Webは新規のためのものだと思われがちですが、既存の深掘りのほうが早く成果が出ることも多いです。

ここまでの6ステップを、社長やWeb兼務の担当者が回す前提で考えると、いちばんの制約は時間です。
優先順位の付け方と運用時間の配り方は中小企業のSEO施策|月8時間で回す優先順位にまとめているので、体制づくりで悩んでいる方はそちらを参考にしてください。
製造業の場合、限られた時間の半分を加工事例に充てるのがいちばん効きます。
時間が取れない月は事例1本だけにして、残りを飛ばしても構いません。
止まってしまうより、細くても続くほうが結果は出ます。

まとめ:探す側に条件を届ける

情報は持っているのに出していない

製造業のマーケティングは、新しいことを始める話ではないと思っています。
毎日の電話や見積もりでやりとりしている内容を、探している人が読める場所に置き直すだけです。
加工方法、材質、サイズ、公差、ロット、納期、対応エリア。
そして、実際に作ったものの記録。
この2つで、比較の土俵に乗れます。

今週できる最初の一歩

順番は図1のとおりです。
①から④は自社の情報整理だけで進められます。
今週できることがあるとすれば、対応条件を紙に書き出してみることです。
その紙が、そのまま最初のページになります。

まず現状のスコアを見てから決める

無料AIO診断は、サイトのURLを入れるだけで、AI検索への対応度を33項目でスコア化します。加工条件・実績・会社情報が機械に読める形になっているかがわかるので、6ステップのどこから着手すべきかの判断材料になります。診断は無料で、個人情報の入力は不要です。

総合スコア
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/ 100

診断のあと、「次にやること」だけが届きます

むずかしい専門用語の羅列は送りません。
「何を・どの順番で・どれくらいの手間で」直せばいいかを、チャメッケ独自のフレームワーク33項目で分析し、図解つきの完全版ロードマップ(全11ページ・無料)にしてお返しします。

今週
かんたんな3つ30分〜1時間でできること
今月
じっくり3つ腰を据えて直すところ
その先
プロと一緒に中身の勝負(ご希望の方だけ)
同封① そのまま使える例文
紹介文やFAQなど、決まった欄に貼るだけの文例つき。
同封② AIに貼るだけの作成プロンプト
ChatGPTやClaudeに貼れば、自分のサイト用の文章が作れます。

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機械チェックの結果を人の目で確認し、あなたのサイト向けに「今週やる3つ」から順にまとめてお送りします(営業メールの一斉配信はしません)。

よくある質問

製造業のマーケティングは、何から始めるのがいいですか?

対応できる加工・材質・サイズ・公差・ロット・納期・対応エリアを一覧にするところからです。
2週間から4週間で作れて、外注費もかかりません。
発注側が最初に確認するのがこの条件なので、ここが書かれていないと比較の土俵に乗れません。
条件表ができたら、次に加工事例を月2本ずつ積んでいく形が続きやすいです。

BtoBの製造業でも、Webから本当に引き合いは来ますか?

来ますが、数は多くありません。
月に何十件も来るものではなく、月に数件の規模だと考えたほうが現実的です。
ただ、条件が合った状態で図面つきの問い合わせが入るので、成約率は高くなりやすいです。
数を追うのではなく、条件の合う相手だけが問い合わせてくる設計にするのが、中小の製造業には向いています。

加工事例が守秘義務で出せません。
どうすればいいですか?

全部出すか出さないかの二択にせず、出せる範囲まで削って書きます。
取引先の社名は「半導体製造装置メーカー様」のように業界と立場だけにし、図面は載せず、材質・寸法帯・公差・工程・数量の幅だけを書きます。
写真は現物ではなく、案件と関係のない端材や設備の写真に差し替える方法もあります。
ただし業界と用途と条件が揃うと同業者には特定できる場合があるので、公開前に取引先へ確認してください。

広告を出したほうが早いのではないですか?

今月中に案件が要る状況なら、広告のほうが早いのは確かです。
ただし、条件表も事例もない状態で広告を出すと、クリックは来ても離脱するので費用だけが出ていきます。
順番としては、条件表と事例を整えてから広告を出すほうが、同じ予算での結果が変わります。
受け皿を作るのに数週間しかかからないので、その分だけ先に済ませるのをおすすめしています。

町工場の集客でも、AI検索への対策は必要ですか?

特別な対策を追加するというより、条件を書くことがそのままAI検索への備えになります。
AIは「この材質を、この公差で、この数量で作れる工場」といった条件つきの質問に答えるので、条件が書かれていないページは候補に挙げられません。
会社概要に所在地・電話番号・事業内容を明記し、構造化データを入れておくと、さらに読み取られやすくなります。
順番どおりに進めれば、結果として備えができている形になります。

成果が出るまでどれくらいかかりますか?

検索から安定して引き合いが入るまでの目安は、早くて3か月、多くは6か月から1年です。
既存サイトの状態、地域の競合の数、事例をどれだけ積めるかで変わるので、個人差があります。
一方で、フォームの改善や条件表の追加は、既存の流入がある会社なら数週間で反応が変わることもあります。
短期で効く部分と、時間のかかる部分を分けて考えると、判断を誤りにくくなります。

竹田康平

竹田康平

京都で屋号「チャメッケ」として、中小企業・個人店のAIO/SEO支援とAI導入支援を行う。自分のサイトでも同じ施策を実践し、検索とAI検索の両方から見つけてもらう状態を検証している。
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竹田 康平

竹田 康平

マーケティング支援者 / 喫茶店主

京都在住。2025年4月、チャメッケを開業。戦略立案から実行まで、一気通貫で対応します。喫茶ふでまめ店主でもあります。

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